成年後見制度法改正の方向性 /

テーマ:尊厳のある本人らしい生活の継続と、権利擁護支援の推進

令和3年度が第一期計画の最終年度で、令和4年度を迎え、第二期計画が閣議決定されました。

第一期計画における課題

*後見人が選定されると、本人課題(遺産分割終了等)解決後も成年後見制度の利用が継続して、本人のニーズの変化に対応できていない。

例えば、遺産分割に対応するため専門職後見人が選任された場合、相続終了後に本人が施設に入所して日常的な資金需要がなくなっても、最初に選任された専門職後見人の変更はありませんでした。

*後見人が本人の意思を尊重しない場合がある。(親族以外の後見人が80%)

*後見人の報酬が、主に被後見人の財産金額に対応して設定されており、必ずしも後見の内容に見合っていないことがある。

*地域により報酬助成事業の実施状況が異なる

第二期計画における対応

*権利擁護支援策の総合的な充実

被後見人の課題が変われば、対応すべき人・期間がかわってきます。現在でも福祉の担当者をはじめ多くの人が係わっていますが、権利擁護支援の視点から、コミュニティ(協力しあえるネットワーク)づくりの視点で取り組み直す必要があり、成年後見制度以外の権利擁護支援策の検討が必要です。

例:地域連携ネットワーク

*後見人への適切な報酬の付与

後見人報酬を見える化すると共に、報酬助成制度の見直しが必要

「報酬助成制度」とは

後見人への報酬は被後見人が負担することから、資力のない方が専門職後見人を付けられないという事態を防ぐため、厚労省や東京都では、後見人の報酬を助成する制度(いわゆる「支援事業」や「あんしん事業」といわれる報酬助成制度)が設けられています。

尊厳のある本人らしい生活の継続

*本人の地域社会への参加の実現を目指す

*成年後見制度の運用改善に取り組み、意思決定支援・信条保護を重視した運用とする

*福祉と司法の連携強化により、必要な人が必要なときに権利擁護支援を適切に受けられるようにする

第二期成年後見制度利用促進計画の構成(中長期・当面・優先事項)

中長期的には

成年後見制度の見直しに向けた検討と、権利擁護支援策の充実

権利擁護支援を意思決定支援と権利侵害の回復支援と捉え、権利擁護支援の地域ネットワークを推進し、地域共生社会を実現させる

○当面は

尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善

  • ・意思決定支援とその浸透
  • ・適切な後見人等の専任・交代の推進
  • ・不正防止の徹底と利用しやすさの調和
  • ・地域連携ネットワークづくり

○優先して取り組む事項

  • ・任意後見制度の利用促進
  • ・担い手の確保・育成
  • ・市町村長申し立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進

まとめ

市民後見を学び始めたとき、日本の後見制度は被後見人の資産を保護することが主眼となっている、例として法定後見人の契約解除権が上げられます。ヨーロッパでは被後見人の自己実現を最重要と考えていて、日本の法定後見制度は権利侵害だととらえられています、という事を学んだのを覚えています。「意思決定支援」についての国際的潮流は、他者が代わりに決めるのではなく、必要な支援をすることにより、本人自らが意思決定できるようにすることです。日本が2014年に批准した障がい者権利条約にも強く要請されています。まさに本人の意思決定を重視し、権利侵害を防止する方向に動き始めたといえます。

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