終活は必要なのでしょうか/

終活は、最後まで自分らしい人生を送るための準備のことです。

終活のメリット

1.ご本人のメリット:自分の意思を明確にすることで、やるべきこと・目標に向かった充実した生活が実現する。

2.ご家族・関係者のメリット:ご本人と意思を共有することで、もろもろの心配事から解放され、ご御本人の前向きな生活が実現する

3.遺言を残すことで、遺産相続のトラブルを回避できる

終活を通してご本人と家族の負担を軽減できます

  • 医療・介護の希望
  • 遺言書・相続について
  • 葬儀・お墓について
  • 老後を支える委任・契約〜任意後見・ペット他

では具体的に考えてみましょう

医療・介護の希望

お元気なうちに家族・関係者と色々なことを話しておきましょう。誰もが体は弱っていくものです。終末期医療・延命処置・介護施設の利用等あまり考えたくないこともあるでしょう。でも、そういったことを話題にすることで、ご本人の考えが皆様に理解され、訪れるいろいろな選択肢に戸惑うことを軽減していくことができます。

難しい問題ですが、日常の会話の中で話をすることで、皆様との理解が深まっていくと思います。

介護制度は複雑で、残念ながら自分の力で判断することはとても難しくなっています。

万一のときに周囲に気付いてもらえる環境を作っておくことをお勧めします。また、しっかりしているうちに、信頼できる人に自分の希望を実現してもらえるよう委任しておくことも可能です(任意後見制度で後述します)。

最後の時に誰に連絡をしてほしいか

最期の時を迎える際に誰に連絡をして欲しいか、自分との関係と共にリストにしておきましょう。ご家族が、ご本人の交友関係を辿って、誰に・誰が告知すべきかを悩まなくて済むようにしましょう。

また、いざという時に家系図が頼りになります。

家系図は先祖をたどるという意味合いもありますが、終活では子や孫への連絡(伝言)簿として使います。意外と、我が家の親族の関係性や属性を子供や孫はよく知らないものです。

会話の中で、万一の際には誰に声をかけるのかを話し合っておくと、残された家族は大いに助かります。弔辞をお願いしたい場合は人選しておくとよいですね。

家系図は、先祖の戸籍を辿りながら作成していくことになりますが、遠方の戸籍を郵送で取得するのは労力・時間がとてもかかります。ご家族もご多忙ですので、行政書士等の専門家に依頼することもできます。

遺言書・相続について

遺言書の作成は民法で定められた法律行為で、15歳以上で意思能力があれば誰でも作成することができますが、相続人の間で紛争が生じないようにするため、法律の専門家にどのような遺言書を作成したらよいのかアドバイスを貰うのがお勧めです。

遺言書を特に書いておいた方がよい場合

おひとり様の方、配偶者と兄弟姉妹が相続人、生前贈与がある、先妻・後妻それぞれに子がいるなどのケースです。

また、お世話になった親族に法定相続分が無い(長男の嫁等)ので、相続分を設定したいときもそうですね。

自分亡き後に財産の分け方や相続分をどうして欲しいのかを相続人に書き残しておけば、「争続」防止に役立ちます。

遺言の方式には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言がありますが、法律の規定を満たしていなければ有効ではありません。

また、不要なものを処分するのは大変です。相続に関わらない動産は、処分を一任する人を指定しておくとよいでしょう。

葬儀・お墓について

残された家族は、葬儀について本人が亡くなった後の短時間で判断しなければならないため、後々後悔することも多いようです。家族葬・葬儀を行わないなど多様化しており、本人が望む葬儀の形であったと周囲にも言えるように、エンディングノートなどに希望の葬儀を記載しておきましょう。墓地や仏壇を相続管理する祭祀承継者を決めておくことも重要です。

核家族化で、以前のようにお墓の維持が難しくなりました。

最近ではお寺が永代にわたって供養と管理をしてくれる永代供養墓や自然に還ろうと海や山に散骨する自然葬も人気です。

また、献体をご希望なさる場合も増えてきており、自分だけでなく、家族と共に話し合っておきたいものです。

散骨について、東京都福祉保健局見解

海や山に焼骨(遺灰)を撒く、いわゆる「散骨」について、国は、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」との見解を示しています。

海や川での散骨では、水産物などへの風評被害が生じるおそれがあります。また、山での散骨では、土地所有者や近隣の人とのトラブルが生じた例、撒かれた骨を目にした人からの苦情や農産物への風評被害のおそれがあります。

こうしたトラブルが生じないよう、人々の宗教的感情に十分に配慮することが必要です。

老後を支える委任・契約~任意後見を中心として

⑴財産管理委任契約

財産管理委任契約とは、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を決めて委任するものです。

例えば、銀行口座からお金を引き出す、各種の支払いをする、介護保険の申請をするなどがあります。

⑵見守り契約

支援する人が本人と定期的に面談や連絡をとり、備えとしての成年後見制度(任意後見)をスタートさせる時期を相談したり、判断してもらう契約です。見守り契約をすることによって、定期的に本人と支援する人の意思疎通が可能になるため、備えとしての成年後見制度(任意後見)の契約をしてから数十年間本人と会わないといったようなことを防ぐことができ、信頼関係を継続させることができます。

⑶任意後見契約

認知症や外傷によって判断能力が失われてしまうと、自分で財産を管理したり、契約をしたりすることが困難になります。

このような場合に自分の代わりに財産管理をしてくれるのが後見人です。法定後見と異なり、委任契約の範囲での後見となるのが任意後見です。

元気な間に任意後見の登録を公証役場で取り交わしておきます。後見が必要になったら家庭裁判所に申し立て、後見監督人を設定してもらって任意後見開始です。

⑷死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む)に対し、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。

以上(1)~(4)は公正証書にすることで、委任の権限を第三者に主張することができます。

民事信託・家族信託について

家族や親族などの間で行われる、営利を目的としない信託の事を“民事信託”といいます。信託銀行等で契約する信託は、一般的な商事信託なので内容が異なります。

最近注目されていますが、信託の程度が行き過ぎ、贈与・財産処分とみなされ、課税されるケースが増えています。ご注意下さい。

おひとり様終活のポイントと生前契約

現代社会では、結婚、出産、離婚など選択も多岐に渡り、おひとりで過ごすケースも増えています。ただ、年齢を重ねることにより、解決が難しい問題も出てきます。そんな場合に互助組織等と生前契約(生前事務委任・任意後見・死後事務委任)を結び解決できることもあります。また、自治体の地域包括支援センター(医療と介護の相談窓口)からの支援の体制が少しずつ広がっていますので、各自治体にご確認ください。まずは情報発信から始めましょう。相続人のいない財産は国庫に入ってしまいますので、寄付等の意向があれば遺言を残しておく必要があります。

ペット(信託契約等)について

日本ではペットに財産を相続させることはできません。

そのためペットの余生を安心して過ごすための施設を運営していたり、新たな飼い主を探してくれたりしているNPO法人など早くから見当をつけて、具体的にどれだけの財産・対価を準備しておくべきか決めておく必要があります。

他にもう一つ「信託」という、法律行為の活用があります。

信託を使う一番のメリットは、ペットのお世話に強制力と監視力をつけることができるという点です。

なぜなら、信託では受託者に課される義務が生じるからです。

自分の大切なペットを自分の万一の際にどのように守っていくかも、現在のペット社会では重要となっています。

ペット信託には、次の費用がかかります。

信託契約書作成料(専門家に依頼した場合に必要)等の初期費用、飼育費(ペットフード代・獣医代・雑費)など

ペットの余命から飼育費用を算出し、種類や余命により必要な金額は変わります。

小型犬で、信託契約書作成料等の初期費用:15万円程度〜、飼育費:年間25万円程度〜

遺贈・保険を使った信託の仕組みもあります。/

まとめ

終活は、自分の人生を全うし、残される家族のために行うとても大切なものです。

また、最後まで自分らしく生きるために、限りある時間の「上手な使い方」を考えることができるよい機会となります。

ぜひ思い立った日から始めることをお勧めします。