2022年現在において、成年後見制度を利用している人は約25万人に過ぎず、潜在的な後見ニーズ(判断能力が不十分とみられる人の総数:推計およそ1000万人)のわずか2%を満たしているに過ぎません。
今後、認知症高齢者等がますます増加し、後見人の需要も一層高まっていくと見込まれますが、親族や専門職だけでこれらすべてをまかなうことは難しいといえます。/
任意後見契約を結んでおけば、本人の財産管理や、法律上の代理人としての役割を果たし、老人ホームへの入所手続きなどの法律行為を行うことができます。ただし、この契約では財産の積極的管理や運用は行えません。
(リーガルエステートHPより引用)
任意後見と法定後見の違いは
任意後見制度 本人がまだ判断能力を有している間に、自らの意志で任意後見人を指名し、その後見人にしてもらう支援を契約で定める。
法定後見制度 本人の判断能力が既に低下している場合に適用され、成年後見人、保佐人、補助人は家庭裁判所が選任することになります。
★よく利用される類型
後見等(後見、保佐、補助)の開始の審判において、後見類型以外の利用件数は伸び悩んでいます。2022年における審判全体に占める割合は、後見が70%を占める一方で、保佐が21%、補助が7%に止まり、任意後見にいたってはわずか2%に過ぎません。
任意後見と法定後見の3つの違い
①後見人の選任時期
任意後見制度では、本人がまだ判断能力があるとき(低下する「前」)に契約を結ぶ必要があります。対照的に、法定後見制度は、判断能力が低下した「後」に家庭裁判所に申し立てをして成年後見人を選任します。
②後見人の選任
<任意後見制度>本人が自ら任意後見人を選び、その権限範囲も自分で設定できます。そして、本人の判断能力がなくなった後に、任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申立し、選任後に任意後見人の財産管理がスタート
<法定後見>家庭裁判所が成年後見人を選び、その権限も民法という法律で定められており、選任と同時に成年後見人の財産管理がスタート
③自由度と柔軟性
<任意後見制度>本人の自由意志が最大限に尊重され、任意後見人にどのような仕事を依頼するかも自由です。巻末に代理権目録 <法定後見制度>その範囲は家庭裁判所によって制限される場合が多い
任意後見3つの財産管理方法
即効型 | 契約締結直後に任意後見監督人の申し立てを行い、すぐに制度を発動させる方法です。これは、判断能力の衰えが見え始めた段階で迅速にサポートを受けたい場合に適しています。 |
移行型 | 本人がまだ元気なうちに任意後見契約を結びつつ、財産管理や見守りのための委任契約も同時に行う方法です。本人の状態に応じて柔軟に対応できる点がメリットですが、任意代理人が監督を受けずに活動を続けるリスクもあります。 |
将来型 | 任意後見契約のみを結び、判断能力が低下してから支援を受ける方法です。この方法では、任意後見監督人の選任まで本人が自己の財産管理を行いますが、判断能力の低下に気づかないリスクがあります。 |
特に多くの方が選んでいるのは「移行型任意後見契約」です。
たとえ判断能力が保たれていても、銀行への外出が困難になったり、事務手続きに関する困難が生じがちです。そんな時、移行型を選べば、任意代理人がこれらのサポートをしてくれるため、将来の財産管理を含めて安心して任せることができるのです。
任意後見のメリット
任意後見制度のメリット
本人の希望を具体的に反映可能
任意後見制度では、希望する支援内容を契約書に具体的に定めることができます。これは代理権目録に記載され、預金管理や不動産売却などの財産管理から、施設入居や医療契約まで、本人が認知症になっても任意後見人が対応できるようにします。
例えば、所有不動産の一部は後見人が処分可能に、他は処分制限をかけるなど、支援内容を自由にカスタマイズできるのがこの制度の魅力です。
後見人を自分で選べる
任意後見制度では、本人が元気なうちに信頼する人を自らの後見人として選択できます。これは、法定後見制度との大きな違いであり、本人の意志が直接反映される点が特徴です。
法定後見制度の場合、本人や家族の希望に関わらず、家庭裁判所が財産状況などを基に後見人を指名します。その結果、本人にとって見知らぬ弁護士や司法書士が後見人になることも少なくありません。法定後見人は広範な代理権を持ち、家族の同意なしに本人の財産を管理します。これに対し、任意後見制度では、本人が選んだ後見人と公正証書による契約を結び、家庭裁判所が後見人を変更することはありません。
この制度を利用することで、本人は自分の意志でサポートを受けたい人を後見人に指定でき、法定後見よりも柔軟なサポートが可能になります。任意後見制度の大きなメリットは、本人の意向を最優先にできる点にあります。
任意後見人の報酬を自由に決められる
任意後見人になるということは、それなりの業務負担が伴います。そのため、対価として報酬を受け取ることがあります。成年後見人と異なり、任意後見人の報酬は契約によって自由に決めることが可能です。報酬の額、支払い方法、時期などは、本人と任意後見人が合意すれば、どのようにでも設定できます。報酬に関する取り決めがない場合、任意後見人は原則として無報酬となります。報酬を予定しているなら、その内容を公正証書に詳細に記載することが重要です。
任意後見制度のデメリット
管理財産が5000万円以下の場合:月額5,000円~20,000円
管理財産が5000万円超の場合 :月額25,000円~30,000円
詐欺や脅迫による契約の取り消し、クーリングオフ制度、消費者契約法に基づく取り消しなど、特定の条件下での取り消しは可能
代理権目録
代理権目録(委任契約)
①不動産、動産、株式等すべての財産の管理・保存等に関する一切の事項
②金融機関、証券会社、保険会社とのすべての取引に関する一切の事項
③定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払いに関する一切の事項
④生活に必要な送金、物品の購入、代金の支払い及び郵便物の受領に関する一切の事項
⑤医療契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、要介護認定の申請等に関する一切の事項
⑥保険契約の締結、変更、解除、保険料の支払、保険金の受領等保険契約に関する一切の事項
⑦登記済権利証、預貯金通帳、有価証券その預り証、印鑑、印鑑登録カード、各種カード、年金証書・出資証書、 土地建物賃貸借契約書等貴重な契約書類保管及び各事項処理に必要な範囲内の使用に関する一切の事項
⑧登記の申請、供託の申請、住民票・戸籍謄抄本の請求、登記事項証明書の請求、税務申告・納付等行政機関に対する一切の申請、請求、申告、支払等
代理権目録(任意後見契で追加される事項)
⑨遺産分割等相続に関する一 切の事項
⑩上記記載事項以外の本人の生活、 療養看護及び財産管理処分に関する一 切の事項
⑪以上の各事項に関して生ずる紛争の処理に関する一 切の事項(民事訴訟法第55条1、 2項の訴訟行為、 弁護士に対する上記訴訟行為の授権、 公正証書の作成嘱託を含む。 )
⑫復代理人の選任、事務代行者の指定代理権目録