意外と高い親族後見人認容率/(リーガルエステートのHPを)

裁判所の後見人選定に関する考え方 (2019年3月18日の厚生労働省の第2回成年後見制度利用促進専門家会議)

◯本人の利益保護の観点からは,後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は,これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい

◯中核機関による後見人支援機能が不十分な場合は,専門職後見監督人による親族等後見人の支援を検討

◯後見人選任後も,後見人の選任形態等を定期的に見直し,状況の変化に応じて柔軟に後見人の交代・追加選任等を行う

上記考え方が示されたが、専門職後見人を中心とした親族以外の後見人の割合は82%近くを占め、一見、親族後見人の登用が進んでいるようには見えない。ところが、2023年の成年後見利用概況からは違った景色が見えてきます。

申請段階での親族後見人の割合

令和5年(2023年)後見開始,保佐開始及び補助開始の認容で終局した各審判事件のうち,親族が成年後見人等の候補者として各開始申立書に記載されている事件は,終局事件全体の約22.0%となっており、令和4年(2022年)については、約23.1%という状況です。

親族後見人の認容率

データから逆算すると、親族後見人の認容率は約88.2%。高い割合で親族後見が認められている。

親族後見のうち、後見監督等選任率は約17.4%、成年後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.1%。残り約4割超は親族での単独後見が認められている可能性がある

R5年家庭裁判所での制度運用状況からの推察

2019年に最高裁から後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示したことから親族後見人についてどのような変化があったのでしょうか?2023年の成年後見事件の利用概況から親族後見人の選任状況を検証してみます。

1.親族後見希望者は、全体の約22.0%しかいない

令和5年(2023年)後見開始,保佐開始及び補助開始の認容で終局した各審判事件のうち,親族が成年後見人等の候補者として各開始申立書に記載されている事件は,終局事件全体の約22.0%となっており、令和4年(2022年)については、約23.1%という状況です。このように、親族後見人希望者は減少傾向にあります。

2.親族後見人候補者の認容率は約88.2%

データから逆算して概算計算すると、2023年においては約8,360件が親族後見人を候補者として申し立てをした事件数に近いと考えられます。

そのうち、実際に親族が成年後見人として選任された事件数は7,381件です。このことから、親族後見人が認められた割合は約88.2%ということがわかります。かなりの高い割合で親族後見が認められている実情がわかります。

財産が多岐にわたる、構成が複雑、親族間で対立があるなどの事情など親族後見人を選任すべきでないと認められる事情がない限り、親族後見候補者が概ね後見人に選任されているものと考えられます。

親族後見での監督人選任率は約17.4%

認容で終局した後見開始,保佐開始及び補助開始事件のうち,成年後見監督人等が選任されたものは1,287件です。

成年後見監督人選任率は約17.4%であり、監督人等が選任される割合は意外と少ないことがわかります。

1,287(後見等監督案件)÷7,381 (親族後見人)≒17.4%(監督人選任率)

まとめ

*専門家の後見人等への就任割合が全体の約8割と高いが、そもそも親族後見希望者は全体の約22.0%と少ない

*データから逆算すると、親族後見人の認容率は約88.2%。高い割合で親族後見が認められている。

*親族後見のうち、後見監督等選任率は約17.4%、成年後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.1%。残り約4割超は親族での単独後見が認められている可能性がある

我々の認識について、今までの親族後見人や障碍者の親を成年後見人とする成年後見申し立てをしても親族や親が成年後見人等となれない認識は改めるべきです。家族関係や財産状況が多岐にわたるなどの要素がなければ、希望した候補者が成年後見人等に就任出来る状況ということを認識しておくべきです。