少子高齢化が進む今日においては、介護の負担が家庭の悩みの大きなものとなっています。家庭の中でも分担が上手くいけばよいものの、どうしても負担が特定の人に偏りがちです。妻が夫の代わりに、夫の親(義親)の介護の面倒をみるというのが、今でも典型的なケースといえます。このような場合、妻の介護の苦労は、義理の親から相続で考慮されるかというと、原則的には、そのようなことはありません。妻は、義親の相続人の立場にないからです。従って遺産分割協議には参加できません。そのため、①妻を夫の親の養子にする、②生前贈与や遺贈を行う、③生命保険等を利用するなど、義親が生前に妻に報いる施策を取ることが多いのですが、それができないような場面では、妻を夫の「履行補助者」として特別な寄与があるとして「寄与分」を主張することも考えられます。
「寄与分とは」
「寄与分」とは、被相続人の財産の維持・増加について「特別な寄与」がある場合には、その貢献度を相続分に加味しましょうという民法の考え方です。療養中の被相続人に自ら看護を行っていた場合や、相続人の負担でヘルパー等に介護させている場合などがその一例になります。この場合、相続人自身に「特別な寄与」があるというには、被相続人との身分関係上一般に期待できる以上の介護負担をしているほかに、無償性・持続性・専従性・介護の必要性などの要件をクリアしなくてはなりません。
「特別の寄与分とは」
相続人以外の親族が被相続人の療養看護を行なった場合、相続人に対して金銭請求が可能となりました。遺産分割協議には参加できないので、各相続人に個別に請求する事となります。
請求できる金額・割合が法定されているわけでは無いので、請求が認められるハードルは高いといえます。被相続人が公正証書遺言等で遺贈の意思と金額・割合を指定しておくことが最も妥当です。/
「履行補助者」と民法改正の方向性
また、学説では「履行補助者」という考え方があります。「履行補助者」の行為は本人の行為とみなすというものです。この考え方によれば、妻という履行補助者の行為は夫(相続人)の貢献として夫の寄与分としての相続分が主張できることになります。判例でもその考えに基づくものがいくつも示されていますが、その一方で「寄与分に履行補助者の概念を利用することに問題がある」「妻を夫の手足のように考えるのは乱暴だ」という反対意見もあるようです。法務省の法制審議会でも「相続法制検討ワーキングチーム」が、寄与分制度の見直し案を報告していますが、「相続人以外の者の貢献等の考慮」については賛否が分かれたようですね。
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